にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

とびきりはね上げガールズライン(小説・コラム)

これから思っていることは全部、小説にしてみることにした。

 

と、ツイッターに書こうとして、もしかして、これもまた、小説にできることなのではないかと考えた。

 

今月から、わたしの生活は急にテンポをあげた。いや、細かく刻まれ始めた。スタッカートで分刻みに。体がまだついて行かない。

今のわたしのやるべきことは4つ、

作り手としてやらなくちゃいけないこと、

社長としてやらなくちゃいけないこと、

そのほかの案件の仕事、

これからの自分のためにやらなくちゃいけないこと。ザッツオール。

今の生活は楽しい。もっともっと楽しくありたい。そのために働く、書く、でも、時間が足りない。

 

休憩がてら、一日のスケジュールをたててみる。とは言っても、頭の中で。今日はペンを持つ気がしない。キーボードは叩けるけど。

 

ここからこの時間は「作り手」でしょ、それで、この時間からは「社長」、「仕事の案件」はこれぐらいの時間をとって、ここからは「自分のための時間」。で、ああ、一日がとっても短い。それなのに、そう言う時に限って、なんとなく都会に出たいと思う。人が集まる場所にいき、本屋に行って、買わない本を読む。最低の行為で、最高の、文化的な生活。

 

昨日気がついたことがあった。とりとめもなくそれを話そう。

わたしはよく「打ち合わせ」をする。正確にはまだ「顔合わせ」だったりする。スタッフと一緒に、いろんな人とあう。とても楽しい。すごく楽しい。

だけど、毎回思う。

「今日の打ち合わせ、どの服装が【 正解 】かなあ」

 

わたしは社長だ。4人の大切な仲間と一緒に、素晴らしい作品をつくる、【プロ】だ。ただのぼんやりとした24歳じゃないんだ。そうやって鏡の中の自分に言い聞かせないと、わたしのクローゼットの中の服たちはいつもプリティなわたしを演出してしまう。ただのぼんやりとした24歳。

 

ハンガーからワンピースを取り出しては、投げ捨てる。これはだめ。これもだめ。わたしが欲しいのは、舐められず・強そうで・美人っぽく、かつおじさんの愛人感が出ない服装。実は最後のは一番、笑っちゃうぐらい大事なんです。男の子にもわかるかな?

 

決まらないドレスに飽き飽きして、ピンクのヒートテックだけ着て鏡の前に立つ。うん、下半身のがっしりした、なかなかの良いプロポーション。そう思うのはきっとわたしだけ。他人が見たら、ぶよぶよの、わたしの大きな太もも。

 

SNOWみたい、と独り言ちた。わたしの目はSNOWみたい。わたしのフィルターを通してだけ、わたしの体はリアーナになる。鏡という画面の中でだけ、わたしは胸の無い篠崎愛になれる。いっそ本当にSNOWみたく、「本当にある」って錯覚させてよ。

錯覚?

と、その瞬間、ひらめいた。

あ、アイメイクだ!!!というか、アイラインだ!

 

急いで化粧ポーチから、アイシャドウを取り出す。数年前に買った、インテグレートのハートのシャドウ。その中の一番濃いブラウンをいきおいよく目尻に置くと、思いっきり跳ね上げた。

 

これだ。跳ね上げアイラインだ。

 

鏡の中のわたしは、途端に強い女になった。ちょっとだけ、インフルエンサーの気分でひとりごと。「トレンドってはねさげでしょ?わたしもずっとそうしてたの。でもこういう時は、思いっきりはねあげる。アイライナーだとキツすぎるから、濃いシャドウで思いっきり。」そうしてこの目に影を作る。「ここまで影があるってことは、ここまでわたしの目なんですよ。」錯覚させる。そうして左目も跳ね上げる。

 

おお、できた。強い。怖い。しかもちょっとギャルい。高校生の時、ギャルはわたしの憧れだった。だけど低すぎる鼻のせいでどうやっても「キュート」な印象になってしまう。キュートはちなみに「滑稽」と読む。ぼんやりしたわたしの顔。

でも、今のわたしは、とびきりハード。クールで強い。滑稽じゃない。

買ったばかりの最高に可愛いザクザクのスモーキーなゴールドのアイシャドウ。細かいラメが飛んじゃうから、細いチップで、ふたえの幅にしっかり入れる。できた。カラーレス・ノングラデーション・ああ強い!今日のわたしはとびきり【 可愛い 】!

なにかを発見できたときはいつも嬉しい。それが何であっても嬉しい。その発見を作品にする。わたしはそれを売る。

 

人が集まる場所にいき、本屋に行って、買わない本を読む。最低の行為で、最高の、文化的な生活。借り物の知性でインテグレートしたい。ううん、するほか無い、ぎりぎりの女の子たちがうごめくこの都市で、わたしもそういう女をやっている。

でも、その本を買ったら?

SNOWで盛れたわたしより、新しいシャドウを塗ったわたしの方が、きっと、少しだけ「リアルに」かわいい。立ち読みした本を家に置いたら、きっと少しずつ「体」に馴染む。たかだか1000円。されど1000円。だけど、その1000円がもう一つ新しい世界を連れてくる。

 

そんな気がする。そう信じてる。だから、それを伝える。リアルはハードでクールで強い。

とびきりはね上げガールズラインで、今日も一日頑張りましょう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

24歳のベンチャーの女社長をしている女の子のお話でした。

note.mu