にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

2018-10-10から1日間の記事一覧

心中天網島ー遊女・小春と治兵衛とその妻・おさん(小説)

うちな、目がさめると、あんたのこと見とってん。 うちの体がもう、うちのもんじゃなくなって、ひんやりしていくのを、なんでか両目からわかってん。うちがぐったり、動かんくなって、あんたの体も、おんなじぐらいひんやりしたね。うち、わかっとったよ。う…

神戸はすべて汽笛の中にある

わたしの生まれ育った町は海辺の、というか、ただ海の横にあると言った方がいい、住宅街だ。 街ではなく、町。 ほとんどが震災後に建てられたマンションで、時々揺れから残った家、新しい家、団地、小学校、埋め立てられた川、鬱蒼と茂る緑、パン屋、八百屋…