にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

【演出】鳥公園のアタマの中展2『緑子の部屋』

鳥公園のアタマの中展2

2019年3月6日(水) 『緑子の部屋』創作風景展示・リーディング上演
会場 東京芸術劇場アトリエイース
コンセプト:西尾佳織

演出:葭本未織(少女都市)

出演:加藤広祐・学習院ひろせ・谷風作・Jean-Philippe

撮影:三浦雨林

主催・製作:鳥公園

提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団

助成:公益財団法人セゾン文化財

https://www.bird-park.com/next

http://www.geigeki.jp/performance/theater203/

 

 

 

当日パンフレットに寄せて /演出 葭本未織

わたしの一番古い記憶のひとつに、仮設住宅で迷子になった、というものがある。

1995年のことだ。被災したわたしは浜辺の埋め立て地につくられた仮設住宅に住んでいた。仮設住宅は小さな村を想像してもらえればいい。屋根の低い似たようなプレハブの小屋がいくつも並んでいた。
迷子の2歳のわたしは、村の中のある親切なお宅に保護された。家の中にはおばさんと、小学校高学年ぐらいのお姉さんたちが2人いて、父母と3人で暮らしている我が家に比べてずいぶん狭いなと思った記憶がある。
記憶。2歳児の記憶である。笑ってしまうぐらい不確かな、けれど思い出せる、記憶。
その家では、我が家にはないコタツにいれてもらった。あたたかい部屋でおばさんに「おなまえは?」と聞かれた。わたしはおそらく「みおり」と答えた。けれど返ってきたのは「みどりちゃんね」という返事とお菓子だった。
それ以降わたしは「みどり」という名前を、自分のもう一つの名前のように感じながら育ってきた。
 
『緑子の部屋』は、孤独な一人の女と、それにまつわる記憶の話である。
女は蟻を飼育している。蟻たちは巣を作る。瓶の中に小さな村ができる。女は蟻の巣に「コミュニティ」を見ている。
女は死んでしまった後も、「コミュニティ」が知りたくてたまらない。だから女は、人間を集めて、また「コミュニティ」を観察することにした。
なぜなら彼女は生きている間、けして「コミュニティ」に入れなかったからだ。
 
上演されるのは女のための蟻の巣だ。観客はいっとき、それを覗きにきた観察者だ。
観客はただ眺めることしかできない。けして舞台に介入できない。
「農場主」(ファーマー)と呼ばれていた女が蟻の巣の一部になれなかったように。
あなたが彼らに向けるまなざしの孤独さと暴力性をどうぞ感じてください。
 
◆ 
 

舞台写真

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