にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

インディペンデントを堪能する(鳥公園の頭の中展2について)

 

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「ここはわたしの居場所じゃない」とよく過敏に感じてしまったとき、わたしはイベントやライブや演劇や映画を見に行くのをやめる。今日は雑誌を買うのを辞めた。

 

そう感じるのは些細なことで、大昔ちょっといじわるされたぐらいの人が、むこうもきっとわたしのことを、突っかかってきたいけ好かないやつだ、ぐらいにしか思っていない間柄の人が、その媒体に関わっている時だ。

 

わたしの心は過敏なので、過去にちょっとしたことがあった人を、紙面やwebや映像で見かけると、すぐぐしゃぐしゃになってしまう。嫌でも毎日広告とかからは目に入れてしまうんだから、できるだけ、その人が少しでも関わっているイベントや演劇は避けて避けて通る。二度とその人たちに関わらなくてよいように。

だけど本当は、どんどんと輪を広げてゆくその人たちがうらやましくて仕方ないだけなのだ。

だからわたしは演劇祭には行けない。

 

でも2月13日(火)、はじめてTPAMに行った。

 

TPAMとは国際舞台芸術ミーティング in 横浜のことだ。

行ったのはたまたま、今度お世話になる鳥公園の頭の中展2のミーティングがあったからだ。

www.geigeki.jp

 

入った瞬間、わたしのコンプレックスがぐしぐしと刺激されてしまって、正直すごく居心地が悪かった。意識が高そうな芸術家たちがあつまる空間。ここはわたしの居場所じゃない。早く帰りたくてしかたがなかった。

 

(だってわたし、芸術性を語り合うとかしたくないんです。だって芸術性なんて、作品をつくればついてくるじゃないですか。そのことについて語りたくないんです。だって言葉は不確かで、嘘をつくから。言葉は触れられないじゃないですか。作品みたいに、目で見て耳で聞いて空気で触れて感じられないじゃないですか。こうやって喋ることに、何の意味があるんでしょうか。わたしは喋るたびに誤解されてしまう。だから、みんな怖い。怖くて仕方ない。何を見て話してるのか、ちっともわからない。言葉は怖い。話したくない。わたしね、目に見えて明確な、数字が好きなんです。だって努力が反映されるじゃないですか。ソリッドじゃないですか。そして彼らには公式があるんです。人間のあやふやなかかわり方とちがってね。だからわたしは、数式みたいにきれいな左右対称の、美しい構成の作品をつくるんです。構成と数字は嘘をつかないから。言葉なんて、一ミリも信頼できないよ!)

 

と、買ったばかりのペパーミントティーを飲みながら、できるだけそんな気持ちを億面に出さないようきわめて気を付けて駄々をこねている自分が、新作『永浜』のヒロインの様だな、と気が付いたとき、少し笑ってしまった。

そしてわたしの張り付いた演技は、きっとミーティングにいらした諸先輩方には、ばれていると思う。みなさん優れた演出家だから。

 

 

これまで、芸術家の集まりにはできるだけ触れないまま過ごしていこうと決めていた。だって、わたしはけしてここに受け入れてもらえない。今までだってそうだったんだから、きっと次もそうに違いない。わたしがこういった集まりを、自分の居場所だと思える日は来るのかしら?と。

しかし、もしかするとわたしがこうやって、怖くて仕方ないからという理由で演劇祭を敬遠するように、演劇自体を怖がる人もいるのかしら、と、帰り道、日本大通りでふと思った。

もしもそんな人に出会ったら、そうじゃないよ、君のためにやってるんだよ、とわたしは言いたい。だけどきっと届かないだろう。

「あ、これはわたしを受け入れてくれない。わたしを排除する。わたしに関係ない。だから行かない。」と勝手に判断されてしまった時、わたしはどうアプローチすればいいのかしら。

 

TPAMでは小林さんと、すごく偶然、すごく久しぶりに再会できて、めちゃくちゃ嬉しかった。嬉しかったので写真は撮らなかった。

関西でたくさんお世話になった阪田さんとも久しぶりにお会いできた。

もちろん、鳥公園の西尾さんとも、鳥公園の頭の中展2の皆さんとも、青年団の皆さんとも、お話しができて楽しかった。

 

こうして一人一人と話してみると、彼らが「わたしを傷つけるかたまり」じゃないことがわかる。なのに大きな枠で見ると、どうしてもこんなに顔が見えないのかしら。怖くて仕方ないのかしら。わたしはわたしがそう感じる、心のメカニズムを解き明かしたい。

 

西尾さんがミーティング中、「インディペンデントであることの大切さ」をお話しされていた。メモを取っていたわけではないので、この言葉は実際とは違うかもしれない。けれどその言葉が妙に胸にひっかかって。二日経った今朝、東横線で、今インディペンデントなわたしは、今このインディペンデントな瞬間を堪能しようと思った。

 

わたしは独立している。どこからも助成をもらっていない。孤独。貧乏。けれど、ソリッドだ。大きな枠をたまたま外している、そんな時を逃さずに、一人一人の顔を見よう。怖くない。失礼なことをされても、それはそれ。わたしはインディペンデント。どこにも属さずに、作品をつくる。

 

いつか、演劇が怖くて怖くて仕方ない人へ、怖がらせてごめんね、僕は君のために物語を描いていたのだよ、そしてこれからも描き続ける、これは君のための物語です、と伝えられるように。

 

よしもとみおり

 

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☆3月6日

鳥公園の頭の中展2

『緑子の部屋』リーディング公演

演出:葭本未織(少女都市)

鳥公園のアタマの中展2 東京芸術劇場

 

☆3月22日~24日

永浜

3/22(金) 16:00~/20:00~
3/23(土) 12:00~/16:00~/20:00~
3/24(日) 12:00~/16:00~

チケット発売中(一般3000円・学生2800円)

劇場:阿佐ヶ谷アートスペースプロット
作・演出:葭本未織

杉並演劇祭参加作品

少女都市