にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

『誕生日がこない』プロダクションノート1(谷賢一氏と一人芝居の初通し)

寂しくて寂しくてたまらない夜がある。

自分の輪郭を自分で定められない時に、布団の中でくるまって泣きながら考えるのは、死んでしまいたいという気持ちと死にたくないという気持ちだった。

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『誕生日がこない』という一人芝居をやる。

わけあって一人芝居をやる。

わけというほど大きな理由でもないが、それでもわたしにとっては大きな理由だと思いながら、一人芝居を、やる、ことに決めた。

 

 

11/19 月

はじめてドラマトゥルクの谷さんに見てもらった。

 

そもそもこの公演を知った人の最初の反応はだいたい「え?なんで谷さんと?」だった。谷さん、こと、谷賢一さんは、DULL-COLORED POPという劇団の今飛ぶ鳥を落とす勢いの演出家で、わたしが最初に谷さんの作品を見た時に感じたのは、「すっごい無理やり涙を出させにかかるやん」ということだった。

勘違いしないでもらいたいが、わたしは同じ気持ちを飴屋法水氏の舞台を見た時に思った。けれど飴屋法水氏の舞台よりずっと、谷さんの舞台の方が人間を愛している。愛しているというのは優劣の問題ではなくジャンルの問題であるので、この話はまた今度。

さてとにかく、谷さんの舞台は「涙が出る」。「泣ける」とかじゃない。物理的に涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってしまう。それを「無理やり出させられた」と表現したくなるのは、「わたしはまだ舞台上で行われている物語を全く咀嚼できていないのに、何故かわたしのエモーショナルで柔らかな部分が刺激されてしまい、涙腺が勝手にゆるむ」からだった。

わたしは観客だぞ、舞台の上で見世物になる俳優とちゃうぞ。でも見世物ぐらいにおかしくなったわたしの顔面と、何故かスッキリしてしまうわたしの心と、釈然としないわたしの脳みその混乱ぷりが、すさまじく「体験」で。観劇した時間が、わたしだけのかけがえのない経験になる。そんなの麻薬じゃん。だからわたしは谷さんの舞台を見に行ってしまうのだと思う。(今度大阪でも公演あるから大阪のみなさん見てね)

 

そしてこの日の稽古も、わりかしスッキリしてしまった。見てもらいながらスッキリするなんてこと、タブーだとずっと思っていた。何故なら長らくわたしにとって演劇は「苦役」で「義務」だったからだ。(なんてことは前に書いたのでよければ読んでね)

ysmt30.hatenablog.com

 

だけどよく考えると、「苦役」と「義務」はイコールで結ばれないよな、なんてことを気がついたりした。多くの人が勘違いしてしまうことだけれど。必ずしなくてはならないことが、しんどくなければならないということではない。

 

そしてよく考えなくても、演劇は「苦役」ではないし、「義務」でもない。

 

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通しのあと、「自分語り」がもっとあってもいいんじゃないか、と谷さんに提案されて、その通りだなと思った。そしてその指摘に思いを巡らせてみると、『聖女』以降のわたしの作品の難解さの一端は、「キャラクターが自分語りを頑なに避けてきたことにある」と気がついた。その理由は、それもまた、演劇にしたいから、ここには書かない。

 

ともかく、『聖女』以降の作品を書いた時の状況について説明していた時、

 

「わたしがわたしというコンテンツを発見してしまったんですよ」

 

と、不意に言葉がこぼれ落ちた。

それはまさしくその通りだった。

 

『聖女』はわたしのことを書いていない。では他の作品は?

 

ここ半年で、そろそろ自分が、自分というコンテンツではないものを書きたいということはわかっていた。実は自分が今持っているストックのうち、ほとんどが歴史物だ。一つは90年代の終わりのビジネスという戦場を舞台にした物語だし、一つはルネサンス期のフランスを舞台にした青春群像だ。他にもたくさん、書きたい土地と風土が数え切れないほどある。

ある種の「クロニクル」を書きたいという気持ちが強くなってきている。

だから、この一人芝居が一つの区切りになると思う。

 

『聖女』の初演から、先週でちょうど3年だった。3年だ、長かった。だけれど、一瞬だった。遠く見えた最初の出発点に、もう一度戻ってこれた。わたしはもう、わたしの話なんか書かない。だから最後に、自覚的に、「わたし」の話をやって見ようと思う。

 

ここに書いてあることすらも、「自分語り」が足りていないわたしのする「わたし」の話。

 

自分語りをする演劇や表現はよく見ますが、彼女のそれは無自覚な部分がありつつも、決定的に確信犯であるように感じました。狂っている姿を冷静にサービスとして提供している、という潜在的な意識が、特に脚本から感じられ、その技術や発想を高く評価しました。旗揚げ公演から東京大阪2都市公演を行うなど行動力を伴った野心にも好感を持ち、次世代応援企画と言うレギュレーションの上で、潜在能力を高く感じるこの団体を推すべきだと考えました。
泉 寛介

 

なんてことを考えていたら、谷さんに

「この話の主人公が葭本さんだって思われるかもしれないけど、大丈夫なの?」

と聞かれたので、

「大丈夫です、全部ごっこ遊びなので。勘違いさせたいんです、もっと」

と答えた。

 

 

『誕生日がこない』

作・演出・主演:葭本未織

12/21(金)-12/25(火)

新宿眼科画廊 スペース地下

 

先行入場チケット ノベルティ付き

3500円

演劇の予約が簡単に。演劇向け電子チケットサービス「演劇パス」: 詳細情報

 

前売券

3000円

少女都市 第5回公演 葭本未織 一人芝居『誕生日がこない』 予約フォーム

 

12/21金 20:00

12/22土 13:00 / 17:00

12/23日 13:00 / 18:00

12/24月 13:00 / 18:00

12/25火 12:00


詳細

http://girlsmetropolis.com

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