にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

恋愛

心中天網島ー遊女・小春と治兵衛とその妻・おさん(小説)

うちな、目がさめると、あんたのこと見とってん。 うちの体がもう、うちのもんじゃなくなって、ひんやりしていくのを、なんでか両目からわかってん。うちがぐったり、動かんくなって、あんたの体も、おんなじぐらいひんやりしたね。うち、わかっとったよ。う…

今日の稽古は夏の匂いがした。二度と来ないと思っていた夏がまた巡り来て、緑が目に染みる。一つの言葉も漏らさずに、僕は君のことを描きたい。

昨日、狩野さんと夜更けまで話したことがある。 ・ なにかというと、『光の祭典』のことで、 母の買ってくれた兵庫の日本酒(黒松白鹿純米吟醸)を飲みながら、 ひたすらに、 主人公の「まこと」のこと、 相手役の「江上」のこと、 これまた相手役の「富田」…

信じる力を忘れない

私は長い間、「写実」だけが自分を担保してくれると考えていた。 私にとって写実とは、すなわち、徹底した「主観の排除」を意味した。 私は、私の「感性」を、つまり、私の「感じる」・「心」を、何一つ信用していなかった。 それは、私が小さい頃から、誰か…

ある女(恋とはどんなものかしら)(小説・百合)

ラインを読んでいるだけでその人の声が聞こえてきたらほんものだとおもう。 今度の恋はほんものかしら、と、画面を切った。これはもちろんiPhoneの。こうしてわざわざ注釈するのは、できたばかりの恋人が、昨日テレビを買ってくれたからだ。 「これでいつで…

ごめんねモダンジャズ(寺山修司は嘘つかない)(小説・後編)

「初めて、小説を書いてみてわかったけど。小説ってこりゃ確かにモダンジャズの手法だな。寺山修司嘘つかない。」 という出だしの小説を書いた。 ◇ 目が醒めると、 「おらが街にも、イオンモールが欲しいな。」 と思っていた。 三軒茶屋は、わたしが、おらが…

ごめんねモダンジャズ(寺山修司の言うとおり)(小説・前編)

「初めて小説を書いてみて気がついたけど」 と、彼女は言った。 「寺山修司が言う通り、ありゃモダンジャズの手法だね」 そういうと彼女・橘文穂(たちばなふみほ)は抹茶ラテをすすった。 埼玉の地は寒冷だ。池袋から電車で20分。降り立った瞬間少し驚く…

バッサーニオを聞きながら(小説・舞台俳優・ガチ恋)

もしかしたら今日、憧れの人に出会っちゃうかも。と思いながら、家を出た。書を捨て、街を歩き、そして劇場へ行く。当日券が無いことは知っている。 ◇ 「あの、この劇場って、24歳以下の割引システムがあるって聞いたんですけど……」 と、受付の人に言うと…