にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

小説

心中天網島ー遊女・小春と治兵衛とその妻・おさん(小説)

うちな、目がさめると、あんたのこと見とってん。 うちの体がもう、うちのもんじゃなくなって、ひんやりしていくのを、なんでか両目からわかってん。うちがぐったり、動かんくなって、あんたの体も、おんなじぐらいひんやりしたね。うち、わかっとったよ。う…

曽祖母のお葬式で演劇をやる意味を見つけた話

「あなたが演劇をやる意味はなんですか?」と聞かれることがよくあった。 その度にどう思っていたかは、こちらの記事に書いたので読んでほしいのだけど。 ysmt30.hatenablog.com 長らく自分にとって、「演劇をやる意味」というものは存在しなかった。 演劇と…

信じる力を忘れない

私は長い間、「写実」だけが自分を担保してくれると考えていた。 私にとって写実とは、すなわち、徹底した「主観の排除」を意味した。 私は、私の「感性」を、つまり、私の「感じる」・「心」を、何一つ信用していなかった。 それは、私が小さい頃から、誰か…

『24番地の桜の園』と新作が書けない11/28と11/29の日記(時々鍼灸)

コメディが難しいのは、もう全部このくだりいらんのではとカットしたくなるとこ。書き終わらなきゃこの体調の悪さは終わらない気がしてきた。 台本が終わらない。「思い出してわたしべつにむつかしいこと書きたいわけじゃなくて、熱い演劇愛にあふれた女子た…

弟と私と親

「あんね、こういうことあったんよ」 と弟に電話すると、だいたい、「お姉ちゃんそういうの多ない?」とは言いながら、彼は「お姉ちゃんが悪かったんちゃうん?」とは言わない。同じことを他の人に言っても、きっとみんなそんなひどいこと言わないのは知って…

ある女(恋とはどんなものかしら)(小説・百合)

ラインを読んでいるだけでその人の声が聞こえてきたらほんものだとおもう。 今度の恋はほんものかしら、と、画面を切った。これはもちろんiPhoneの。こうしてわざわざ注釈するのは、できたばかりの恋人が、昨日テレビを買ってくれたからだ。 「これでいつで…

とびきりはね上げガールズライン(小説・コラム)

これから思っていることは全部、小説にしてみることにした。 と、ツイッターに書こうとして、もしかして、これもまた、小説にできることなのではないかと考えた。 今月から、わたしの生活は急にテンポをあげた。いや、細かく刻まれ始めた。スタッカートで分…

ごめんねモダンジャズ(寺山修司は嘘つかない)(小説・後編)

「初めて、小説を書いてみてわかったけど。小説ってこりゃ確かにモダンジャズの手法だな。寺山修司嘘つかない。」 という出だしの小説を書いた。 ◇ 目が醒めると、 「おらが街にも、イオンモールが欲しいな。」 と思っていた。 三軒茶屋は、わたしが、おらが…

ごめんねモダンジャズ(寺山修司の言うとおり)(小説・前編)

「初めて小説を書いてみて気がついたけど」 と、彼女は言った。 「寺山修司が言う通り、ありゃモダンジャズの手法だね」 そういうと彼女・橘文穂(たちばなふみほ)は抹茶ラテをすすった。 埼玉の地は寒冷だ。池袋から電車で20分。降り立った瞬間少し驚く…

バッサーニオを聞きながら(小説・舞台俳優・ガチ恋)

もしかしたら今日、憧れの人に出会っちゃうかも。と思いながら、家を出た。書を捨て、街を歩き、そして劇場へ行く。当日券が無いことは知っている。 ◇ 「あの、この劇場って、24歳以下の割引システムがあるって聞いたんですけど……」 と、受付の人に言うと…