にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

『24番地の桜の園』と新作が書けない11/28と11/29の日記(時々鍼灸)

コメディが難しいのは、もう全部このくだりいらんのではとカットしたくなるとこ。
書き終わらなきゃこの体調の悪さは終わらない気がしてきた。

 

台本が終わらない。「思い出してわたしべつにむつかしいこと書きたいわけじゃなくて、熱い演劇愛にあふれた女子たちとひどい目に合う美しい男を描きたかっただけのはず…」と思わずツイッターでつぶやく。いましめのように。

 

毎度思うけど、今書いている作品が、今までで一番つらい。セリフが設定に負けて複雑になりすぎている。そして亡霊に取り憑かれている。

 

「あんたまるっきり女優じゃん。つまんないこと言ってないで、素直に撮られたいって、言いなよ」という夢波の言葉に今すごい泣かされる。千秋楽だけ、夢波の岡田氏は微笑みながら言ったんだよね。その顔が忘れられん。うだうだイジイジしてる今の外川に、この台詞はグサッとくるわ。

 

と、女優の外川遥が呟いてくれた。

そして確かに、今読み返しても、『光の祭典』は、執筆時に何かが取り憑いてたのかな?ってぐらい、すべての台詞が美しく強度が高い。構成は難しい。見やすさとしては断然『聖女』の方が上だ。だけど、筆を滑らせるたびに、あの頃の亡霊が目の前を横切って、新作は苦しい。

 

先日、『桜の園』を原作にした『24番地の桜の園』を観劇した。

『24番地の桜の園』、串田和美の描くフェデリコフェリーニ8 1/2』だった。幻想の中の桜の園と「見て、お母さまだわ。白い洋服を着て。あの頃と何もかも同じ」と言う、自分もお母さまと呼ばれるのにお母さまになれないラネフスヤカ。八嶋智人松井玲奈をトロフィーモフとアーニャにするセンス。最高。

戯曲から読み取れるラネフスヤカが精神的に桜の園の男たちすべてを掌握していたとすると、小林聡美のラネフスヤカは肉体的にすべての男たちを掌握していた。新しい解釈。「変わってしまうのね」と言いながら何も変わらないアーニャとワーリャも良かった。

今まででいちばん幸せそうなラネフスヤカだった。過去の遺産を持ち続けることは必ずしも幸せになることではない。よかったねえ。ロパーヒンはしあわせになれるのかな、永遠に心に白い服を着たラネフスヤカを飼い続けるのだろうか?とか考えてしまった。

シャルロッタたちの大幅な改訂が本当によかったな〜。特にシャルロッタは本当に良かったな。あの改訂はだれが思いついたんだろう。ポスト・ドラマのメタ演劇のギリギリの線を通って、桜の園まま、桜の園じゃなかった。 

わりとありとあらゆる点で最高だった、串田和美『24番地の桜の園』。チェーホフ限界オタクだから、解釈違いがありすぎたけど(オタクだから不遜な言い方ゆるして…) 大幅な改訂で際立つ小林聡美の可愛すぎるラネフスヤカがすごく新しかった。二幕のポスト・ドラマ全推し、そこも含めておもしろかった。

 

感想を書き連ねながら(これは全てツイッターに書いた再録だからもう少し増えるかもしれない)

チェーホフも、苦しい苦しいって言いながら書いてたのだろうかと考えた。

たしか『かもめ』の初演がボロクソに言われすぎて、もう二度と話書かねえって思ったらしいけど、その話を思い出すたび、「ばか!チェーホフ先生の次回作を期待しても出てこない世界の人間だっているんだからね!帝政ロシアのインテリのばか!」と思う。

 

さて本題。これは、今回、初めて思ったこと。

台本書き始めてから体調がよくない。

 

びっくりした。記憶の中ではこんなこと一度もなかったからだ。

思い出せ、22才。『聖女』の頃はどうやって話書いてたんだ?バイトと大学と他の稽古しながら書いてたんだよな。それが大学4年生の体力か。

24才なってすぐの『光の祭典』の時はどうだったっけ?確か、打ち合わせがある日以外は毎日15時間寝てた。残りの9時間で台本書いてた。実家だからできることだった。

そしてもうすぐ25才。

学びとしては「演劇書くのって体力いる」。

 

そう思いながらツイッターを開けたら、先日みた『24番地の桜の園』の感想へ、出演されていた八嶋智人さんから直接リプライをいただけていた。もう興奮しすぎて、わあわあと叫びながらリプライしたら、トロフィーモフのことロパーヒンと書いていた。(八嶋さんの役名を間違えた)

桜の園』、100回は読んでるのに。大好きなのに。話を見ているときは確かにしっかり役名をわかっていたのに。八嶋智人なのに。馬鹿野郎なので、もうチェーホフのこと好きって名乗れない。

「僕はトロフィーモフですよ」と訂正リプライが入った。恥ずかしい。

 

もうだめだ、倒れそう、終わった、と思って、最寄駅についたとき、衝動的にマッサージ屋へ駆け込んだ。ここ一ヶ月どうにも体調がよくなく、ずっと母親に行くようすすめられてたこともあったが、それよりも八嶋智人に失礼なリプライをしてしまったショックの方が大きかった(ウケる)(ウケない)

 

で、整体マッサージなるものに生まれてはじめて行った。

そしたら、ここ1ヶ月で一番元気になった。

びっくりしてる。「健康最高!寝ます!」とツイートして、その日は本当に寝た。

 

翌朝、起きても驚いた。ここ1ヶ月で一番からだが軽い…。

「絶対運動してくださいね」と昨日マッサージ師さんに言われたからことを思い出し、これから少女都市(劇団)の稽古にストレッチと運動いれようと決めた。

 

1日をほくほくと過ごし、夕方。これを機にしっかり治そうと、マネージャーと親から勧められていた鍼灸にも行った。どちらも初めてで、しかも痛そう。わたしは痛いのにめっぽう弱い。めげそうだったが、直前にわたしはえらそうにこう垂れていた。

 


好きなタイプがわかっちゃった。変われる人。女の人でも男の人でも、人のためにか、自分のためにか、わからないけど、変われる人。進化できる人。好きなタイプになりたいからがんばろう。

 

 

「変われる人になりたいからまず台本かける人に変わろ♡ふぁいと♡自分♡天才♡えらい♡人間♡」とその後にもつぶやいていた。偉そうに。体調不良で病院に行くことも怖いくせに。「変われるえらい人間なので、体調をキープできる人間に変わるために鍼とお灸いきます…」とツイッターに流し、診療所のドアを開けた。

 

結果、鍼とお灸のおかげで、めっちゃ体調よくなった。

 

体調がよくなると全てが薔薇色になる。マッサージと鍼とお灸はすごい。メンタルまでのびのびさせてくれる。

 

家に帰って、あさって受験生が泊まりに来るので部屋を片付けて始めた。受験生、と呟いて胸がドキドキする。うちでいいのかしら。心置きなくのびのびと受験してほしい。

 

実は、突然話すが、新作の登場人物たちはほとんどが女子大生だ。初めてだ、こんなに高い女子大生率。自分自身が純・女子大生だったのは丸2年前だ。その頃の写真と今の顔を鏡で見比べるとずいぶん性格が丸くなったなとおもう。あの頃は友達がいなかった。毎日が不安で暗かった。性格に難ありさが顔に出ている。でも、それを含めて女子大生だよなあと、今、新作で女子大生を描きつつ、思っている。

 

演劇オタクな話をしたい。用語が意味わからないのは許してほしい。女子大生だったころの同級生にはびっくりされそうだけどこの一年半でわたしも立派なポスト・ドラマの使徒となった。毎日まじめにポスト・ドラマのことを考えている。

そしてこれはもっとびっくりなことなんですがわたしはまだ女子大生をやっている。

相馬千秋せんせいの授業に出るたびにリアル女子大生にクラクラしている。リアル大学生は若い、強い、痛い、可愛い、全てがカオスのようにいりみだれた空気を当然のように吸って吐いて生きている。完全にびびりながら輪に入れてもらっている。でも、楽しい。

 


演劇の現場は、台本無しには上がらない。苛酷だ。だけど、22才のあの日から、岸田國士戯曲賞を取る、絶対取る、必ず取る、だからどんな努力でもする、真っ当な努力をする、人の言うことを素直に聞いて前の作品よりも確実に良いものを書く、絶対に取る、と思いながら書いている。孤独を胸に 夢をその手に。


「今日、約2週間ぶりに、ほんとうに体調良いから、みおりお父さんとお母さんからかわいい顔と健康な体と豊かな感受性もらって生まれてきてよかった〜〜って気持ちになってる。よかった〜〜。」とつぶやいた。24才女子大生。もうすぐ25才。

 

はい、今日もたいへん楽しゅうございました。台本書こ。