にんげんはかんがえる葭である

よしもとみおりのブログ

gekidanU家公演企画Vol.6 「おいてきぼりの桜の園」

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おいてきぼりの桜の園によせて。千秋楽が超満員になったので(本当にありがとうございます)観ることがかなわず、俳優の皆さんの声を聞きながら、いま受付でぽちぽちとこの文章を書いています。

 

わたしは作品をつくる時いつも、自分の持ってる疑問をスタートに紡いでいきます。今回の『おいてきぼりの桜の園』は、なぜ生きているだけでわたしは苦しいのか・そしてなぜ同じように苦しい人がたくさんいるのか、というのがスタートでした。

 

苦しんでいる人によくかけられる言葉に「みんな苦しいんだから」というものがあります。一理あります。でもわたしは、わたしの苦しさがおかしいと言うより、わたしの苦しさというのが特別なものではなくみんなが苦しいのが「普通」であることの方が、変に思えました。この変な状況はきっと本当に長い間続いてきて。でも、長い間続いたことが突然変わることもあるじゃないですか。去年のコロナ禍とか、緊急事態宣言下の街の様子とか。だから、きっと長い間続いたことも変わるタイミングがくるのだと思って。でもどうせなら、外部要因によって不可抗力的に変わるのではなく、自分自身の手で「苦しい状況」を変えられるんだと希望を持ちたいなと思い、今回の物語を少し先の未来・2025年に設定しました。

 

わたしの考える2025年では、同性が恋に落ちることに社会的な障壁は無いし、男性が女性同士の恋愛を壊すことや、同性を愛していた人が次に異性を愛することを「心の成長」「順応」と捉えたりはしません。

あり得ないと思うでしょうか?でも、あり得ないことは無いのだと思います。

 

『おいてきぼりの桜の園』と同じように、チェーホフ桜の園』も書かれた当時には「ありえない」ことを描いていました。でも結局、チェーホフの言葉通りになった。(ロシアには革命が起こり、貴族中心の社会制度は一変しました。)

 

人は、ある一定の人数の人間がひとつの夢を見始めると、それが実現するようになっているんじゃないかなと思います。

 

チェーホフ桜の園』を15歳の時に読んで、世の中にこんなに面白い戯曲があったんだ!と熱狂したのは、そんなふうに、物悲しい物語ながらも、どこか未来に希望を持たせてくれる戯曲だったからのように思います。そんな物語を創りたいと思い続けて今回、叶えられた気がしています。

 

わたしにとって演劇というのは、俳優と、スタッフと、そして観客と、ともに夢を見て希望を語る場です。

わたしにそういう場を与えてくれたgekidanU。主宰の遊さんとヒガシくん、先輩劇団員の皆さん、今回出演してくださった俳優の皆様、ご観劇くださった皆様、本当にありがとうございました。

 

わたしの大切な・みんなの大切な場所である南千住のアトリエが、来年の春には無くなってしまうことが、たまらなく寂しいです。

でも、「変化」というのは物語の端緒(スタート)になります。

『おいてきぼりの桜の園』で、ひとりぼっちのゆきこのところへ、家出少女のはるこが飛び込んできたように。南千住アトリエという、家を出て行くことで、わたしたちにもまた新しい変化が現れるのだと思います。

 

あらためまして、『おいてきぼりの桜の園』に関わってくださった皆様、ご来場くださった皆様、応援してくださった皆様、ありがとうございました。

 

葭本未織 よしもとみおり

 


gekidanU家公演企画Vol.6
「おいてきぼりの桜の園

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脚本 葭本未織(gekidanU)
演出 葭本未織(gekidanU)/ヒガシナオキ(gekidanU)

2021年12月9日(木)~12日(日)

 

オンラインサロン・チェリーブロッサムは、恋愛セラピスト・城ゆきこの主催する「本当のあなたを好きになる」ための自己肯定オンラインサロンです。

南千住、5−25−6。ここにはかつて、見事な桜並木を持つお屋敷があった、らしい。
そのお屋敷は五年前、競売にかけられ、無くなった。そこらへんに乱立する極小住宅に姿を変えた。桜並木も無くなった。
切り倒され、コンクリートで埋められた。だけど結局買い手がつかず、駐車場になった。この離れだけが、昔のまま、取り残された。

———彼女は桜の園のお嬢さんだ。そうにちがいない。

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●出演

麻生実希・池内明世・市原ユウイチ・花奏和音・持田千妃来・弥上零

鈴木明日歌(GEKIDANU)・ヒガシナオキ(GEKIDANU)・森下凜央(GEKIDANU)

 

●スタッフ
舞台監督      ヒガシナオキ(gekidanU)
舞台美術     よりぐちりょうた(gekidanU)
照明    電気マグロ(gekidanU)
音楽    鈴木明日歌(gekidanU)
音響    宮平舜也
制作    渡辺奈都
宣伝美術  佐藤莉子
企画統括  遠藤遊(gekidanU)

 

【gekidanU 家公演企画とは】
2012年の結成以来、gekidanUが拠点とする南千住の住宅を改造したアートスペース「アトリエ 5-25-6」での公演企画。
小劇場に馴染みの無い層にも触れていただけるようなパッケージ作りとともに、公演を重ねる毎に「家劇場」としての空間の作り込み、整備を進め、演劇ファンにも驚きを届けられるような、この場所ならではの作品づくりを目指していく。
Vol.6となる今回は、チェーホフの名作「桜の園」をモチーフに、過去に栄えた大豪邸の離れに集う人々を描く。

 

【gekidanUとは】
gekidanUは2012年に遠藤遊を中心に結成された団体。
荒川区南千住を拠点に活動中。野外劇、住宅での家公演を中心に「誰かの原体験になるモノをつくる」を根底に、
言葉の力を重視し、「場所」とのつながりを意識した演出/創作が特徴。主宰遠藤遊の旧住居である住宅を改造したアートスペース「アトリエ5-25-6」を運営し、劇場・稽古場としての貸し出し、プロデュース公演の実施や、毎年夏に開催している野外演劇フェス「弔EXPO」の開催など、演劇を行うための「ハード」を作っていくことを活動のもう1軸としている。
2022年春にアトリエの取り壊しに伴う移転が決定し、引越し先を選定・募集中。

 

●問い合わせ先/各種URL
劇団公式メールアドレス gekidanU0211@gmail.com
公式Twitter @gekidanU